年金事務所の調査

最近何かと話題の多い年金事務所ですが、日頃、どのような調査や対応をしているのか?

実態や具体的な方法をご紹介します。




 どんな調査があるの?

年金事務所は日本年金機構の傘下で、名前からもわかるとおり、社会保険(健康保険と厚生年金)の手続き等を行っています。

今回のテーマである調査については主に2つの種類があります。



1.新規加入の調査
これは新しく設立された法人(株式会社や有限会社など)が社会保険に新規に加入する場合の調査です。

といっても、立ち入り調査などはまずありません。

きちんと会社が存在するのか?
実際に経営が行われているのか?
などを把握するだけですので、帳簿書類等で判断されます。

ところが、法律上は法人であれば社会保険は強制加入なのにもかかわらず、実は社会保険に加入したいと申し出た場合でも断られてしまうことがあるのをご存知ですか?

創業したばかりの会社できちんと給料などが支払われていない場合などは、年金事務所としてもきちんと保険料を回収できる見込が少ないと判断して、「加入はもう少し待って下さい」なんて言われる場合があるのです。

これは保険料の滞納率などが年金事務所内の成績に関係しているとも言われています。



2.総合調査
これは年金事務所の調査の中でメインとなるものです。

東京都などは社会保険の新規加入手続きをした翌年は必ずこの総合調査が行われます。

すでに社会保険に加入している会社には、おおむね3年から5年くらいの周期で調査が入ります。

前に紹介した労働基準監督署と同じように、ある程度業種を狙って調査を入れてきます。

数年前までは労働者派遣業が集中砲火を受けていましたが、最近では建設業、小売・サービス業、ビルメンテナンス業が多いといえます。

なぜこのような業種が狙われるのか、わかりますか?

全体的にいえることは、パート・アルバイトが多い業種だということです。

その事業所で働く正社員の1週間の労働時間(普通なら40時間)の4分の3以上働いている場合(簡単に言えば1週間で30時間以上)にはパート・アルバイトであっても社会保険に加入しなければなりません。

しかし、パート・アルバイトの方は主婦や学生が多いため、社会保険に加入していない(加入したくない)というケースが多いのです。

年金事務所としてもそのようなことはすでにお見通しですので、集中して狙ってくるのです。

その他にも、高齢者が多い事業所や外国人労働者の多い事業所では社会保険の未加入者が多いであろうということで、最近では狙われやすくなっています。




 総合調査の基本的な流れとは?

年金事務所の総合調査は基本的に呼び出し方式がとられます。

事業主に対して事前に葉書などで通知が行われ、調査の日時、準備書類等が告げられます。

調査の際に注目される帳簿書類としては賃金台帳をはじめ、出勤簿(タイムカード)、就業規則、賃金規程、労働者名簿、源泉所得税の領収書などがありますので、きちんと整備しておかなければなりません。

当日は年金事務所へ出向き、会社の実態について話し合います。

もうおわかりかと思いますが、年金事務所の目的はズバリ「社会保険料の未納分回収」です。

本来、社会保険に加入しているはずの従業員が加入していない場合には、保険料を徴収していきます。




 年金事務所はどうやって取り立ててくるの?

具体的にどのようにして保険料を回収していくのか、実例をご紹介しましょう。

年金事務所の担当官がやってきて、小切手や手形を書かせる場合があります。

それができない場合は銀行預金や売掛金、最終的には不動産等も差し押さえる場合があります。

実際、ある水道工事会社が元請会社の請負代金を差し押さえられそうになったことがあります。

こんなことをされたら、自社の信用問題に影響がでますよね。

次からその元請会社からは仕事がもらえなくなってしまう可能性が強いですから。




 会社としては何をするべきか?

年金事務所としては、過去にあった社会保険庁の不祥事もあり、以前よりかは対応がやさしくなってきました。

といっても相手は保険料徴収のプロですから、色々な作戦をとってきます。

そうなると、会社としては以下のような対策が必要です!



1.事前対策として
まずは調査が入っても大丈夫なように内部体制をきちんと管理する。

これは帳簿書類の完備はもちろんのこと、就業規則などで従業員(特にパート・アルバイトなどの非正規従業員)の労働時間管理をきちんと行うことです。

社会保険の加入義務が発生しないようにうまくシフトを組むということでもいいでしょう。



2.事後対策として
調査が入ってしまうとわかったら、社会保険労務士などの専門家に事後対応までおこなってもらうのが、費用対効果でも一番いいでしょう。

もし、そのような力を借りずに、経営者が対等に立ち向かうにはどうすればいいのか?
その対応策を1つご紹介します。

まずは年金事務所の言い分を聞いた後に、こちらの言い分をぶつけます。

例えばパート・アルバイトを社会保険に加入させなさいといわれた場合、

「パート・アルバイトの人達は正社員と違って会社に対する帰属心が薄いのは、あなたもわかりますよね。

もし私が明日、パート・アルバイト全員に社会保険に加入しますといったら、ほとんどの人はすぐにでも退職していくでしょう。

なぜなら主婦や学生はご主人や両親の扶養範囲内で働きたいといった希望などが多くあるからです。

もし明日からパート・アルバイトがいなくなったら、とてもじゃないけど会社は倒産してしまいます。

倒産してしまったら私達も困りますが、年金事務所内でのあなたの評価はどうなってしまうの?

しかもこれだけ国全体が中小企業を応援するといっているのに、逆方向に進んでしまうのはおかしなはなしですよね。」

といった感じのやり取りも効果的でしょう。

ただし、反論するだけでは絶対にだめです。

歩み寄る姿勢を見せなければなりません。

「売上を伸ばして、来年の今頃は必ず保険料を払えるような社内体制にしていきますから」といったように、相手の立場も考えてあげることが必要なのです。




年金事務所から調査の案内が来たら、すぐに専門家に相談して下さい!

内藤社会保険労務士事務所ではこれまでの経験をいかした調査対応を行っておりますので、お気軽にご連絡下さい。

なお、新規のお問い合わせにおいて、お電話やメールによる「具体的な解決策の提示等」は行っておりませんので、ご了承下さい。

TEL 044-328-9296   MAIL  info@club-nsr.com